「初心者のためのやさしい金融」 塚崎公義・山澤光太郎 著 元来は、保険の存在により人々の行動が変化し、それが保険の存在を危うく することをモラルハザードと呼ぶ。 実際には、政府の過保護が民間企業の自助努力の意欲を失わせる場合など も含めた広い意味で用いられる場合も多い。 盗難保険に加入した人が、カギを買わなくなると、盗難が増えて保険会社は 倒産してしまうでしょう。 このように、保険に加入した人が行動を変えることで、保険の存在が危なく なってしまうことを、モラルハザードと呼びます。 政府によって預金が保護されていると、放漫経営をしている銀行でも、預金を 集めることが出来ますから、銀行経営者に放漫経営を思いとどまらせる抑止力が 減ってしまいます。 これもモラルハザードです。 ペイオフを解禁すればこうした弊害は減らせますが、預金保険制度がある 以上、モラルハザードを完全には防げませんから、当局の検査などで厳しく 放漫経営をチェックする必要が有るわけです。 モラルハザードという言葉は、より広い意味で用いられることも有ります。 政府が過保護であると、業界が自助努力を怠るインセンティブとなりかね ません。 親が過保護だと子供が真面目に働かないといったイメージでしょうか。 貸し手と借り手の間でも、モラルハザードの問題は起こります。 借り手が全財産をハイリスクハイリターンの投資に用いるとします。 成功すれば莫大な利益が借り手の株主に入り、失敗すれば株主は有限責任 ですから貸し手にも被害が及びます。 これは借り手に有利で貸し手に不利といえるでしょう。 借り手のモラルハザードが発生する余地があるというわけです。 |