「初心者のためのやさしい金融」 塚崎公義・山澤光太郎 著 変動相場制下の為替レートを動かす要因は実に多様であり、購買力平価、 経常収支、内外金利差、市場の思惑などが複雑に作用する。 為替の変動について考察する期間が異なると、異なる変動要因が重要性を 持つ場合も多い。 超長期においたは「妥当なレート」である「購買力平価」が為替レートを決める 最重要要因だといえるでしょう。 購買力平価から大きく乖離したレートは、経常収支の不均衡をもたらすため、 長続きはしないというわけです。 中長期においては、経常収支と内外金利差が重要な要因です。 日本の経常収支黒字が大きいと、輸出などで受け取ったドルを円に換える人 が多いので、円高ドル安方向の力が働きます。 一方、ドルの金利が高いと、円をドルに換えてドル預金をする人が増えるため、 ドル高円安方向の力が働きます。 金利差に着目した考え方は「アセットアプローチ」と呼ばれています。 短期においては、市場の思惑などが大きく影響します。 「皆がドル高になると思うと、皆がドルを買うので、実際にドル高になる」という ことがしばしば起きていることから、市場参加者は「他の市場参加者がドル高を 予想しているか否か」を常に気にしています。 株価と同様に為替レートにもケインズの言う「美人投票」的な要素が強いということ でしょう。 日々の為替レートは、予期せぬニュースによって市場の思惑が変化することで 動きます。 一方で、例えば金利政策の変更といった大きなニュースでも、市場の予想通り であれば、「そのニュースはすでに織り込み済み」であるとして、為替レートが全く 動かない場合もあります。 |